今月は登りのことを書こうと思いますが、まずいことに私は登りが大変遅いんです。だから読者に登り方を説くのが非常に心苦しくあります。
また、雑誌などで走り方のレクチャー記事があったとしても、体格が合わないと真似しようにも物理的にできなかったりしますね。私の走り方やフォーム、ポジションの作り方は、私の体格だからこそ選択できる点が少なくありません。
前回の店長選手権が終わった後の号で、脚力別の練習方法を特集しましたが、私はどちらかと言うと体格別に特集した方がより参考になるのではないかと思っていました。そういう点では、せっかく脚力自慢の店長達が集まる機会があるのだから、今年はルーラー、スプリンター、クライマー、TTの各項目を身長別体重別に分けて、それぞれの差異に着目してくれたら面白いんじゃないかと勝手に思っています。
「最速店長日記」を書いていると、どう書いたら、どの程度の人に、どの程度参考になるのかを良く考えます。もちろん私の中も山岳部分をどう“クリア”するか、いくつかの手段を持っていますが、僕のヒルクライムの具体的な走り方書いたところで、184㎝の男のヒルクライムの話など、どれほどの人の参考になるかははなはだ怪しいものです。
ですから今回は趣向を変えて、身長180㎝を超える男にとって、山登りがどう見えているかを書いて行こうと思います。
【ヒルクライムが速いと“便利”】
実は私は、平地巡航では複数対1人の状況になっても、そうそう厳しくなるとは捉えていません。むしろ集団の先頭を引きながら独断でライバル達を泳がせることもありますし、それをある程度決定的にした後に独りでのジャンプを狙うこともあります。あるいは集団の前方を泳ぎながら独りで後方からのチェイシングを待っていてもよいと、魂胆することが多くあります。
その上で、スプリントがまともに参戦できればスプリンター以外には負けないと思っています。多少の驕りがあるかもしれませんが、私のレース作戦として、少人数の逃げを作り出した後にゴールスプリントに持ち込む作戦は、もっとも確率の高い勝ちパターンの1つになっています。
それに対して、登りはダメです。前々号でも言及したように、チーム戦にならないアマチュアレースの場合は、どんなに平地が速くたって、滅多に結果には結びつきません。勝敗に直結する武器がクライミング能力なのは、誰の目にも明らかです。
平地とスプリントに分がある私は、逃げを作りやすくタイム差も着きやすいヒルクライムに対して、登りが速いと便利だな~、という認識を持っています。
【人の心を折る3分間】
前述したとおり、僕はピュアスプリンター以外にはそう簡単には負けないことをわかっています。多少ゴール前で長く引く事になったとしてもヒルクライマー相手なら無理やり勝ちきることができるかもしれません。だから山岳コースでクライマー相手にするときは、チギれなければ勝ちだと思って走っています。切れたら終わりなので、切れそうになった時に精神を支える言葉が、チギれなければ勝ち、なんです。
ロードレースというのは、詰まる所人間の精神力の削り合いです。もうダメだ、俺の脚は終わった、先に相手にそう思わせた方が勝つように出来ています。そして人の心を折るには3分のインターバルが一番効果的なんです。
実はこんな私でも、登りに強い人に対してテンポ走ならある程度ついて行くことが出来ます。しかし実際にはテンポ走が平和に続くことはまず起きません。ヒルクライマー達が「僕みたいなヤツ」をやっつけにかかるからです。
低負荷と中負荷のインターバルがかかり始めると、私は一瞬でチギれてしまいます。ヒルクライムが強い人は負荷の山が大きいこともさる事ながら、回数がたくさんこなせるという特徴が一貫しています。私が5~6発しか打てないピストルを、10発も20発も打てるというわけです。
【ということで対策方法は】
最近の私の練習は、3分ほどで登りきれる坂をひたすら往復するというものです。3分で登る坂はだいたい1分で下ることになるので、強制的に3分頑張って1分休むというインターバルになってしまいます。回数を決めてタイムを縮める練習を行なう時もあれば、タイム一定でどれだけの回数をこなせるかをターゲットにすることもあります。どちらの場合でも、休んでいる時間よりも頑張っている時間の方が長いことポイントで、より実戦的な練習になると思っています。
攻撃は畳み掛けてこそ効果的ですから、3分高負荷インターバルという武器を磨いて、ライバルをやっつけてやりましょう。いやいや、私はたいてい攻撃される側なのですが…。
- 商品名
- 【BN】第35回最速店長日記:クライミング。登りで強くなるためのポイント。
- 登録日時
- 2014/10/28(火) 14:39
- メーカー名
- サイクルスポーツ連載記事『最速店長日記』バックナンバー