【一通り全部強くなろう】
ロードバイクの練習は、大きく分けて、平地巡航、山岳巡航、最高速アップの3つに分かれます。今号は最高速アップについて言及しますが、その前に1つ断っておきたい事があります。
それは、私はそもそも脚質と言う言葉が嫌いだという事です。
脚質とは、周りに比べて何となく得意だ、と思うくらいに抑えておいて、実際はルーラーもクライマーもスプリンターも、好き嫌いせずにオールラウンドに練習しないといけません。
【スプリントの重要性】
スプリント力のない人は、スプリント力がある人と最後まで一緒にいてはいけないので、どこかで逃げる必要がありますね。
自分の戦うステージが上がってくるにつれて対戦相手との力も拮抗し、そうそう簡単に逃げきれる事は無くなり、大集団であれ逃げ集団であれ、最終的にスプリントをしなくて済むレースは滅多にありません。
先頭集団に残ることが出来ても、少数精鋭で逃げ切れても、最後に着順に絡めるだけのスプリント力が身に付いていないと、結局は、ただ走っているだけで終わってしまいます。
スプリントを避けてきた人に厳しい一言を言いましょう。スプリント力が無い人はレースの戦略性が狭いんです。ピュアスプリンターになろうという話ではありません。あくまで戦略性を広げるための、「最低限のスプリント力」で構いません。では最低限のスプリント力とは、具体的に何km/hなのでしょうか?
【スプリントは完全なる技術の塊】
2015年3月月行なわれたJBCF開幕戦:宇都宮クリテリウムにおける私のスプリント時の速度は72km/h、その次は68km/hでした。トッププロの世界のように、80㎞/h以上の世界でどんな技術が必要なのかは、今の僕にはわかりませんが、おそらく65km/hを出せれば、そう簡単に負けることは無くなってくるはずです。
具体的な数字を挙げて、整理してみましょう。私の身長184㎝にして体重は67㎏程度です。そのうち、脚の筋肉量が14㎏に対して、腕の筋肉量は3㎏でした。僕は腕立て伏せは10回もできませんし、懸垂は1回もできません。上半身はガリガリなんです。
最高出力はせいぜい1300W台後半、スプリント時はさらにその8割くらい、およそ1100W程度で行うのが最も速度が出せています。また出力を900w程度に下げても、最終的な速度はほとんど変わりません。
フルパワーでスプリントをする技術が無い事、フルパワーを支えられるだけの上半身の筋肉が無い事、それでも70km/h以上を出せること。ここから見えてくることは、70km/h以下レベルの速度域では、パワーはそれほど重要ではないという事です
スプリントはバイクコントロールが可能な範囲内で行い、フルパワーをでダンシングするよりも空気抵抗の低い姿勢を保つことを優先し、65km/hを出すために、上半身の筋肉や巨大なパワーを求める必要性は無いんです。
【人間をエアロ化する】
人間とバイクを合わせたとき、もっとも空気抵抗になる部分は人間のお腹です。考え方は2つあって、1つはお腹に当たる空気を極力少なくすること。もう1つは当たった空気を上手く後ろに流してやる事です。とにもかくにも、姿勢を低くすることは大前提です、
右腕と左腕の合間から入ってきた空気がお腹に当たることを、個人的に「パラシュート効果」と呼んでいます。単純なネーミングセンスですが、これを解消することで空気抵抗が減ります。パラシュート効果はスプリントに限らず、自転車競技において常に念頭に置かなければいけない最重要項目です。TTになるとその考えはさらに進んで、そもそもお腹に空気を当てないという話になったりしますが、スプリントでも追及する理想は同じです。
ステムを下げて姿勢を低くする、ハンドルを狭くして脇を絞る、肩よりも頭を下げるなどの手段を用いて、まずはお腹に当たる空気を可能な限り削っていきます
それでも完全に空気が当たらなくなることはありません。次の段階では、当たった空気を、どう後ろに流してやるかを考えていきます。
お腹に当たった空気は脚に沿って巻き返します。それを防ぐ手段の究極はスーパーマンスタイルのような、脚を前に出さない方法です。当然ロードバイクでそれは無理ですが、 “上半身本体”をなるべく前方に置くことで、相対的に脚を後ろに持って行きます。やはりTTで前乗りするのと同じ理屈です。
つまり、自転車の乗車姿勢において空気抵抗を減らそうとした時には、必ず前乗りになるんです。それさえわかっていれば、スプリントフォームを逆算的に作っていくことが出来ます。
フォームを崩さないことを最優先にすること。そのうえでちゃんとトルクが伝わっているかを感じながらペダリングすること。単純なパワーに頼ることなく、その2点のみに注意していれば、次第に「最低限のスプリント力」が身についてと思います。
【スプリントの練習は非常に難しい】
スプリントの練習は、基本的に独りではできません。というのも、非常に高い速度の中で、姿勢が崩れていないか、トルクが地面までしっかり伝達しているかなどを、自分自身で感じ取るのは非常に難しく、常に誰かに見てもらいながら練習する必要があるからです。それでもどこかでやらなきゃいけません。スプリントの練習から逃げていては、本番で肝心の勝利にも逃げられてしまいますよ。
- 商品名
- 【BN】第34回最速店長日記:スプリント。最高速を引き上げるためのポイント。
- 登録日時
- 2014/10/04(土) 14:41
- メーカー名
- サイクルスポーツ連載記事『最速店長日記』バックナンバー