【ハンドルリーチの紐解き】
前回(第26回)の続きです。前回は、サドルの位置決めるのにフレームは関係ないよ、という内容でした。サドルは高さと交代幅の2つを考えればよかったのに対して、ハンドルリーチは、持つ部分それぞれの距離と、形状や幅、各パーツとの関連性を考えて妥協点をさぐらなければいけません。考えなければいけない項目が多いため、ハンドルのポジションニングはサドルのそれに比べて何倍も難しいです。それでも、ポジション変化の効力を一つずつ整理していけば、解決策を導くことが出来ます。
【速度のキャパシティー】
僕がポジショニングのコツだと思っていることですが、ポジショニングは使用する頻度が高い部位を基準にすると、不満を減らしていくことが出来ます。ポジションは、理想のフォームがパーツによって制限されるという、引き算的な考えをすると理解しやすいと思います。
それを、下ハンは頑張る時、上ハンは休む時と分けたあとに、速く走る時は下ハン、楽に走る時は上ハン、と言い換えてみます。さて。ここで、キツいけど40㎞/hで走れるポジションと、楽だけど38km/hでしか走れないポジションの2つがあるとします。それぞれで35km/hで走る時にどちらが楽かと言えば、実はキツいけど40km/hで走れるポジションを使って35km/hで走った方が楽なんです。
僕はこれを速度のキャパシティーと呼んでいて、自分の限界速度をできるだけ引き上げた上で、割合的に楽をする事を考えていくと、上手くいくことが多い。ロードバイク全般においては、速く走ることではなく、楽に走ることが大事。速いから楽なのではなく、楽だから速いのであり、速さは楽をしようとした結果の副産物であることが多い。
【限界最高速度を上げるには……】
パワーを出せるポジションで走る事です。厳密にはパワーを出しやすいポジションで走ることです。基本的にハンドルは、遠くて低い方が大きな力が出ます。前傾がキツくなって体幹への負担が大きくなる事がデメリットですが、なるべくなら低く遠くしていきたい。
遠さと落差は、最終的にどちらも速度に繋がりますが、その過程が違います。どちらが簡単に対応できるかと言うと、落差の方です。落差のある自転車に対応するときに使う筋肉が、お腹や背中などの大きな筋肉ばかりであるのに対して、ハンドルが遠い時に使う筋肉は、上半身の小さく細い筋肉が主になっていくため、適応するのに時間がかかるからです。また、遠いリーチに適応しようとして上半身を鍛え上げた挙句、体が重くなりすぎてパワーウェイトレシオが落ちて巡航時間が短くなってしまっては、何のためにハンドルを遠くしたのか、わからなくなってしまいますね。
【出すとこ出す】
リーチはフレームとステムとハンドルの3つで決まりますが、ハンドルは形状によって決まる場合が多いため、たいていはステムとフレームの2つで調整することになります。具体的には、①大きいフレームに短いステム②小さいフレームに長いステムの2パターンが考えられ、大きいフレームも長いステムも、どちらも自転車の安定性につながります。しかし同じリーチにしたときに、どちらがより安定するかといえば、後者です。ポジションとバイクの挙動を天秤にかけていった時、ステムを短くしたときのデメリットをもっとも回避すべき、という結論にたどり着きました。
余談ですが、乗り心地という点でも、小さいフレームの方が優れています。
自転車が快適かどうかは、たいていお尻で感じとりますが、お尻を支えるサドルの高さは、シートチューブとシートピラーの2つの合計値で決めています。フレーム1サイズ間のシートチューブの差は30㎜程度ですが、なるべくシートポストを長くした方が、自転車全体の振動吸収力が上がります。数mmのリーチと引き換えに、シートピラーを30㎜も短くしてしまっては、小事にこだわり大事を逃す結果となってしまいます。
- 商品名
- 【BN】第28回最速店長日記:ハンドル選びはポジションの鬼門
- 登録日時
- 2014/03/20(木) 14:45
- メーカー名
- サイクルスポーツ連載記事『最速店長日記』バックナンバー