フレームに求められる性能。固さ、軽さ、乗り心地、バネ感、耐久性。
普通です。普通。あまりに普通。
たとえば、S-WORKS・ターマックが固さ100点だとしましょう。そのかわり体力の吸い方は半端ないです。軽さはキャノンデールのスーパーシックスが100点です。そのかわり弱い。速いけど勝ちづらいマシン。バネ感はコルナゴ・C59が100点。でも機敏さに欠けます。乗り心地はルックの566が100点ですが、その他の項目でハイエンドに勝てません。
BMC・インペックは全部80点です。
雑誌なんかでは柔らかい...と言われていたインペックでしたが、かなり奥底までしっかりしていてフルパワーで踏んでもしっかり返ってきて、ビタッっと腰を据えて走ります。
インペックのシートステーは見るからに「突っ張り棒」であり、バック三角をしなせる意図のない設計だな、と乗る前から意識させられた部分ですが、実際も、特定のチューブに役割を持たせているわけではなく、フレーム全体で振動吸収の仕事をし、フレーム全体で板バネの役割を担っています。ダウンチューブの前部が幾分やわらかい感じがしましたが、それがチューブの意図的な設計なのか、ラグ部とのギャップなのかは感じ取り切れませんでした。おそらく後者ですが、少なくともダウンチューブのフロント部分がやわらかいことが、走りに生きている感じはありませんでした。
インペックに700㎞以上乗り、様々なホイールを試し続けたことでわかったのは、ホイールの長所を阻害せず、またホイールの弱点をまったく補わないこと。
たとえばジップ。ジップは軽くてよく回り、横剛性がなくひらひらと動きます。インペックにジップを付けると、よりジップらしさが増したように感じます。その点扱いづらさも助長します。
デュラエース・C35-TUの良さは、横剛性とハブ剛性です。これもジップと同じように、より“らしさ”が際立ちます。そのかわり力をガンガン吸います。フレームが甘やかしてくれません。
R-SYSの特徴はねじれ剛性です。下手な自転車につけるとフレームが負けます。これも付けてみると、より明確にR-SYSのトルク伝達効率が優れている事を実感することができます。そのかわり50km/h以上での失速感をフレームが補ってくれることはありません。
国語100点で理科30点の子とは違う、全教科80点の子。優等生、無個性、裏方、この系統の代表格が、ルック・595です。
ジップ、イーストン、マビック、レイノルズ、シマノ、それぞれに良さがあり、弱点があります。長所を伸ばす。短所を補う。それはフレームとの相性ですが、あくまで脇役に徹し、一切自分を主張せず、その他の機材の性能を最大限に発揮させることができるフレームが世の中にはいくつか存在します。595のようなフレームは稀有で、非常に特質ですが、インペックもそのうちの1つ。
これは乗り味が非常に特徴的なジップを最初につけていたからこそ分かったことかもしれません。試乗車にはイーストンのEC90のクリンチャーがついていたのですが、僕はクリンチャーホイールのパンク修理セットを持っていないことから、そばにあった586についていたジップ・303でとりあえず走ったんです。もしこれがハイペロンかレーシングライトだったら気づかなかったかもしれません。
世の中にはジップばかり持っている人、レイノルズばかり持っている人がいます。フレームがホイールとの相性を気にしないことは、ホイールを中心にバイクを考えている人にとっては良い特徴です。ジップらしさが好きな人は、インペックを使えばよりジップが好きになると思います。マビックが好きな人は、インペックを使えばよりマビックが好きになると思います。
ちなみにカンパのホイールも特徴が無いのが特徴です。ハイペロンなんかつけて走ったら、ほんとにただの普通のチャリになっちゃうんじゃないかなと思って、フリーの合うレーシングライトXLRを付けて走ってみました。
すると、日本にまだ2台しかないインペックは、ほんの数分で、僕の荒ぶる気持ちを完全になだめてくれました。
滅・行くぞ感。
~代理店より借りさせていただきました。走行距離740㎞~
- 商品名
- BMC インペック
- 登録日時
- 2012/02/15(水) 16:57
- メーカー名
- フレーム