フリーダムのホームページには僕のインプレ記事がある。なかなか進まないけど、書きたい放題書かせてもらっている。でも開店当初から、やっぱり雑誌でホイールやフレームのインプレの記事を書きたかった。
自転車で一番大事なパーツであるホイール、しかも誰も知らない最新のホイールの、複数の相対的な評価を付ける記事は、一番やりたいインプレ記事。それを雑誌でやりたいやりたいと言い続けてはきたものの、言っちゃなんだが実現するとは思わなかった。
2本3本だけならともかく、20本以上のホイールでの相対的な評価で、自分の感覚と付けた点数と総合得点を全体で矛盾させない事は、自分が思っている以上に難しかった。関係ないとはいえ、他の2人の点数や感想、原稿も見ていないガチンコ評価なので、実際に本誌が発売されて内容を見るまで気が気じゃなかった。
でもすごくやりがいがあったし、こうして実物が出来上がって見ていると、やってよかったと心から思う。元選手でもない僕と駆け出しの店に声をかけていただいたサイクルスポーツには感謝してもしきれないし、また声をかけてもらえるように店を頑張りたいと思う。
サイスポをやり始める前から、フリーダムにはホイール選びの話を聞きに来る人が多い。フリーダムに来れば実物を見ることが出来、特性や向き不向き、そしてフレームとの相性を聞くことが出来る。在庫しているホイールが売れる売れないにかかわらず、各メーカーを多く並べて見せ、そのうえで自分で全て使ってきたからと推測している。付き合いのあるショップで買わなくちゃいけないから話を聞くだけだけど…と申し訳なさそうに帰っていくが、大丈夫、僕は気にしていない。
店を出すうえで最初に決めた自分との約束は、店の在庫を特定メーカーに傾倒しない、自分の好きなメーカーでも特別扱いしない、この2つ。店の知名度が上がってからは、多方面から営業や圧力がかかるようになったし、ウチのメーカーを頑張ってくれないかという打診もある。もちろんその中にはずいぶんと儲かる話もあるが、たいてい断っている。
扱うのは全くかまわない。でも購入を決めるのは僕ではない。
フリーダムでは店長の影響力がとても強いから、僕が多少強引にでも薦めればお客さんは買ってしまうだろう。だからあえて薦めないことが大事と感じている。
自転車雑誌のいち読者として、インプレ記事には不満があった。
カーボンの老舗○○、カーボンの雄××、カーボン技術においては右に出るもののいない△△、
個性的だがクセがない。
剛性が高いが、しなりもある。
脚がある人に向くが、一般ライダーにも適正だ。
レース向けだが、ロングライドもしやすい。
機敏に動くが、安定性も高い。
乗り心地は悪いが、不快なレベルではない。
コスパが良い。価格を考えれば安い。
性能としてはトップレベル。これは買うべきだ
どれもこれも褒めた内容であるばかりでなく、その褒め言葉まで一緒。
大事なことは、他とどう違うか、どのくらい違うか、その差が明確にわかること。
こんな文章を読むために僕の貴重な時間を割く価値はない。
インプレ記事を作るにあたって、自分が読者だった時の希望をいくつか実現してもらった。
まず5点満点10点満点では細かな違いが判らないから100点満点制にしてもらった。100点満点での評価は学校のテストだ。60点は合格。59点は不合格。その感覚がより身近になるのではと考えた。それに60点と61点は実際ほとんど変わらないが、多少なりとも優劣をつけることが出来る。どちらかといえばこちらの方がマシ、という結果を数字で表すことが出来る。それは5点満点では難しい。
基準となるホイールを作ることも希望した。皆が知っているホイールを基準にすれば、1本目の人も2本目以降の人も、より想像しやすいのではないかと考えた。最初は基準ホイールをR500やレーシング7に希望した。 完成車についてくるから、みな必ず通る道。結局『2013年の新モデル』というテーマ方向性の点で難しく、個人的にキシリウムに任せたので、“皆が知っている”という点ではいささか不満が残ったが、1つの基準を作るということはできた。
使用している機材や自分の好みを明確に表記することもそうだ。フレームとの相性、自分との相性、ただ速いパーツを集めたからと言って、速く走れるわけではない。インプレ記事を無に帰すような文章も、今一度書いてほしかった。どんなホイールがどんな人に合うか、自分が何をしたいかでホイールを決めるのがどれほど大事な事かを強調してほしかった。
雑誌が広告で成り立つ以上、『大人の事情』というのも多いにあるのだろうが、せめて自分だけでも好き勝手書きたかった。僕の評価は従来の雑誌からみればかなり厳しい点数で、編集部も記事にするには勇気がいったはずだ。事前に、あまりに内容が厳しい言葉ばかりだと校正が入りますともあったが、9割9分、僕が書いた内容を掲載してくれた。
反響はあった。月曜も火曜も関係者から電話が鳴りっぱなし。ぶっちゃけ何処がよかったですか?具体的な改善案は何処ですか?自社が他社より劣っている部分は何処ですか?みな、他社の情報が知りたいのだ。何十年もこの世界にいる人が、こんなにも僕に聞いてくる。
世の中は消去法で決められている。
他との違いは、悪い部分がわかってこそ比較できる。
つまり悪い部分こそが選ぶ決め手なのだ。
もしまたインプレをやらせてもらえるのなら、このことを忘れずに臨んでいこう。
- 商品名
- インプレ特集記事の裏話。
- 登録日時
- 2013/01/25(金) 23:01
- メーカー名
- サイクルスポーツ関連