ルックの695エアロライトにまつわる空力の話を書いておこうと思ってすっかり忘れていた。風つながりで書いておこう。
エアロロードの先駆けであったのは、サーベロのS3、フェルトのARシリーズ、リドレーのノアの3つ。「空力を良くする」にあたって、刃物のように細い翼断面のフレームを作ってきた。これがエアロロードの黎明期。
問題点はフォークとBBが薄くなりすぎて、剛性が極端に落ちること。さらに当時は上下異型大口径ヘッドベアリングが無かったこともあってヘッド剛性も極端に弱かった。
つまり自転車全体がふにゃふにゃで、まるいチューブに勝てなかった。
この後、エアロロードが“ブーム”になり、スコット・フォイルやスペシャのヴェンジなど、翼断面の後ろをぶった切ったうえでフレームを分厚くするという「カムテール理論」が出てきて、剛性と空力の両立を図り始めた。
でっかくなって重くなったことで、今度は山が登れなくなった。
どっしりとした平坦番長は選手に選ばれないという問題が浮き彫りになると、メーカーは剛性と空力に加えて、軽量性も確保しなければいけなくなった。
さらに、実際にエアロロードで走ってみるとわかるのだが、強い横風を受けると、フレームからモロに押し出されてしまう。その結果まともに踏めないという現象が起きる。
せっかく前面投影面積を削減しても、まともに出力を上げられないとすると、結果的にどこまで速くなるのか、わからなくなってしまったわけだ。
その後はジャイアント・プロペルに代表されるように、単純な風洞実験ではなく、横から風を当ててみたり、人間をまたがらせてみたり、実際に外で選手に走らせたりと、ダイナミックな状態でのエアロが重視されてきた。
最近(2013年)わかってきたのが、ホイールと各チューブの間の部分が一番空気抵抗を悪くするという事。ホイールのクリアランスを確保してやれば、空力が改善できるという事がわかってきた。
エアロの専門家じゃない私からすれば、随分と初歩的な話まで遡ってきたな、という印象なのだが、最初期の段階まで戻らないといけないほど煮詰まってきたとも考えられる。
実際にトレック・マドン7におけるブレーキキャリパーの無いシートステー部の空気の抜けの良さは圧倒的で、それだけで翼断面だのカムテールだのを凌駕してしまっている。
そしてそれをフロントフォークにも持ってくればいい、という流れが起きている。UCIのフレーム作成規定に、フォークの内側の幅は最大6㎝までという項目があるのだけど、6㎝めいっぱいまで広げたフォークが出てくるようになった。
これを 『 幅広フォーク 』 と名付けよう。
幅広フォークのいいところは、剛性を確保しやすいというところ。
つまり同じ剛性であれば軽くもできる。空力を改善したうえで、剛性と軽量化が同居できるという、夢のような話が垣間見えてきた。
今はまだTTバイクでしか見受けられけど、近い将来、かならずマスドロードまで降りてくるはずだ。
これからどうなっていくかというと、たぶんまた丸パイプに戻っちゃうと思う。
剛性と軽量化は空力より優先されるからだ。そして空力はホイール周りのチューブに任せる。現時点で空力と軽量性と剛性と、全部欲しいとなるとたぶんそうなる。それはきっと2014年から2016年くらいの話。少なくともダウンチューブやトップチューブの極端なエアロ化は収まるだろう。
そのあともう1つ時代が進むと、再びカムテールが戻ってくる。
フォークやシートステーの空力に加えてもう一度ダウンチューブを...と。2017年とか2018年くらいかな?そのころには薄くしても剛性が落ちないくらいの新素材と新技術が生まれていると思うからだ。
フォークとホイールのクリアランスを確保するという項目を、2013年の695エアロライトはいち早く実現させてきた。
フォーク内部にブレーキを埋め込んだことで、横側から撮られた写真に注目が集まるけど、695エアロライトを真正面から見てみると、フォークがグバァッっと横に広がっていて、ホイールとのクリアランスがものすごく広い。
あれね、きっと速い。
695エアロライトに限って言えば、ステム~コラムチューブ~フォークと通るアウターワイヤーに埋め込まれたVブレーキのメンテ性が話題に上るけど、あれもたぶん問題ない。
ユーロスポーツの人が他のフレームの説明をしている間、なぜか僕がエアロライトの解説をしていたんだけど(笑)、数回触るだけでスムーズに外せるようになった。ワイヤーだけじゃなく、各部のボルトも工具を突っ込みやすい位置にセットしてある。調整をすることにおいてもちゃんと考えて作られている。
Vブレーキの引き白がちゃんと確保できるのかと言う懸念はあるのだが、大まかには楽しみなフレームだ。
~~~~~~~~~
2013年10月16日、HP日記より。
- 商品名
- エアロロードの変遷
- 登録日時
- 2013/10/18(金) 16:08
- メーカー名
- その他