9000系が非常によくできていることから、雑誌ウェブ各インプレにおいて、7900系への批判記事が相次いでいるが、実は9000系が出た今でも個人的に7900系デュラエースにそれほど不満はない。
~レバー・ディレイラー・ワイヤー編~
単純なシフトスピードは7900系と比べてまったく差を感じない。また7800系デュラエースを組むことは今でも全くめずらしいわけではないが、正直7800系からほとんど変わっていないように感じる。シフトのスピードに関して言えば革新があったのは7800系である。
通常走行時、変速をかけたときのフロントシフトアップはさすがに7800系と同等とは言えないが、7900系からは差を感じない。チェーンリングの革新は7900系。また7800系ですら他メーカーと比べると非常に良いと感じる。
こう書くと良くなってないように思えるが、それは9000系がよくなっていないというわけではなく、そもそもの原点が高くて進化が感じられない、ということである。
スピードや正確性に差がないため、9000系の存在意義は引きの軽さにある。また2枚目から1枚目へのシフトフィーリングが変わらない点は7900系からの改良点として挙げられる。
リアディレイラーのワイヤーのとり回しが厳しくポリマーコーディングがすぐに剥げてしまう…というインプレが散見する。たしかにこのコートは剥げやすく、ボルトの締め直しすら重ねたくないレベルであるが、ポリマーコートが剥げたからと言って摩擦抵抗に関係する部分ではなく、見た目以外に悪い点はない。シマノが何年もかけて開発した(耐久性も含めて)商品に対して、僕が何かを指摘するのはナンセンス。シマノが問題ないと言い切るのだから、僕はそれを信頼して、純粋に性能だけを堪能すればいいのだと思う。
~レバーの形編~
7900系はブラケットが太すぎて握りにくいという記事が多くみられるが、自分個人のことを話せば全く関係ない。というのも僕は手を広げると親指から小指まで26㎝、中指単体でも11㎝ある。握力も右68g左71kgありますから、レバーに困ったことはありません。
ハンドルでもブラケットでも、最近はエルゴノミックという言葉が目立つが、そこを踏まえて僕はエルゴノミックに懐疑的である。
ツールで使われているハンドルメーカーは6メーカーあり、どのメーカーも3種類から選部事ができる。アマチュアとしてメーカーを問わない僕らはつまり18種類の中から選ぶことが出来る。
しかしコンポはそうはいかない。デュラエースはデュラエースしかないため、手が大きくても小さくても選択肢はない。不満があろうとなかろうと、デュラエースを使いたければセッティングに不満を持ったまま使わなければいけないし、それは当然シマノに限った話ではない。
僕は、レバーに求めることはセッティング幅の広さだと考えている。1つのレバー形状で全ての人に合わせるというのは所詮無理なため、全ての人がそれなりに妥協を許せるに持って行ける、懐の深さが大事である、と。
9000系のセッティング幅は7900系のそれと変わらない。
~インナーワイヤー~
新しいポリマーコートのインナーワイヤー
9000系レバー+9000系キャリパー、7900系レバー+9000系キャリパー、7900系レバー+7900系キャリパー、7800系レバー+9000系キャリパー、7800レバー+7800系キャリパー、スーパーレコード、スラムレッド、
上記の組み合わせでインナーワイヤーを試した。このワイヤーの性能は高い。
~ブレーキ編~
デュラエースのブレーキキャリパーは、7900系の時点ですでに世界最高のブレーキキャリパーだった。しかしそれが赤子に思えるほどよくなった。左右のアームにニードルベアリングが入ったこの9000系のブレーキキャリパーは、11速化したということを抑えて、今回のモデルチェンジの一番の意義である。
9000系のレバーの軽さの秘訣はレバーでも、苦労して作った高価なワイヤーでもない。まさしくこのブレーキキャリパーのお陰である。現在7900系を使っている人は、わざわざ9000系を買い買える気がしないでしょう。でもブレーキだけは買いかえる価値がある。
~ブレーキシュー編~
アルミリム用ブレーキシューがR55C3からR55C4にモデルチェンジした。
若干柔らかくなったが、制動力は変わらない気がする。
~トリム・チェーン編~
9000系が明確に7900系に劣る部分。
7900系においてトリムが無いというのは画期的な事だったのにトリムが復活したことにおいては、雑誌などでは、より正確な操作のために、と書いてあるがそんなことはない。あれはフリーが1.85㎜広がったことに変速機が対応できなかったというだけで、トリム操作は無いに越したことはない。
チェーンの切削も目に見えて劣る。105やスラムにデュラエースチェーンを入れるだけで変速能力が向上するというのは常識的で、推奨されていませんが7800系フルデュラコンポですらチェーンにおいては7900系を入れない理由は無い状況だが、7800系を思い出させる9000系チェーン形状は、細くなったチェーンに対して切削技術(素材の強度?)が追いつかなかっただけである。
~クランク編~
僕の脚力では7800系の時点ですでに過剛性。7900系になったところで恩恵はありません。9000系では?…歴史の繰り返しです。
ただ、重量的にはずいぶん軽くなり、恩恵は感じやすい。
~総括~
9000系が出たことで、手のひら返したように7900系は失敗作だと言われているが、僕はそうは思わない。確かにレバーの引きは軽くなりましたが、そこだけにとらわれてはいけ無いと思う。改善幅は微々たるものであり、ドライブトレインでは明確によくなったと感じられない部分も多々ある。進化の幅としては7800系から7900系に変わったときほど大きくなく、感動は少ない。
しかし、今言ったことを翻すようだが、9000系は史上最高のデュラエースなのは間違いない。たしかに世界最高の機械式コンポである。スーパーレコードやスラムレッドなど足元にも及ばない。9000系のデュラエースは、現在機械式ができる最高峰のものである。
そして皮肉なことに、シマノがこれだけのものを送り出して証明したのは、機械式は電気式には敵わないという事だった。
カンパのEPSと機械式9000デュラなら、僕はカンパを選ぶ。
- 商品名
- デュラエース 9000
- 登録日時
- 2012/11/27(火) 16:13
- メーカー名
- その他