全体的にガチガチで一枚板。ただただ動力性能だけを追求した、純度の高いレースフレーム。乗り味、乗り方は前作と全然変わってない。走る、止まる、曲がるにおいてすべてが一級品で、根本的な脚力がないとあっという間に力を吸われてフレームに弾き飛ばされてしまう...ことに気が付くまで乗らせてもらえない試乗会などでは最も評価を得やすいタイプ。
単純に固さと軽さを競っているこのグループは、フレームの性能の優劣が一番残酷に示される。
デローザ・キングはS—WORKS・ターマックには勝てない。なぜなら軽さと固さを誇示したバイクなのに、その軽さと固さで負けているからね!となる。
軽くするために塗装すら省かれデカールを貼って軽くマットクリアを吹いただけの場合も多い。マットブラックが流行だというが、マットブラックを流行らせたかったわけではなく、軽くしたかったというのが、理由としては先だろう。
クリアを1回塗装をするだけでも最低150gは塗らねばならないが、この手のグループでの100gは死活問題。凝った塗装はまず出来ずデカールになる。実はこのジレンマに完全に陥ってしまっているのが現在のデローザ。せっかく高級な素材を使って仕上げても、塗れば重たくなって動力性能が落ちるし、デカールでは高級感が出ない。苦し紛れに塗ったところで塗膜も薄くて欠けやすい。御三家…デローザ、コルナゴ、チネリの中で、動力性能の分野で勝負をしているデローザは非常に苦しい。個人的な考えを言えば、マットブラックはシックでカッコいいという言い訳はセンスがない。ヒネりのない黒で統一されたロードレーサーは他人行儀でたまに見る分にはカッコ良いが、所有するとすぐに飽きるものだ。安っぽいメタリックとシールで仕上がった今のデローザに、僕はコルナゴやチネリほど憧れない。
...話をもどそう...
TCRアドバンスドSLはこのタイプ。で、その2番手。
あまり僕の立場できっちりと順番を決めるのはタブーかも知れないが、S-WORKSのターマックSL4が1番。次いでコイツが2番。3番がキャノンデールのシックスエボだけど、Sとジャイが西と東の横綱ならば、キャノンデールは大関ってとこ。そのくらいこの2本は突出している。
この手のタイプは“鏡”で、乗り手に対して1mmたりともごまかしはしない。ツールレベルの人間に合わせたフレームキャパシティーだから、世界で数百人を除き、宝の持ち腐れとなる。僕がTCRアドバンスドSLを駆ったとして、TCRアドバンスドSLがTCRアドバンスドSLたる性能を発揮するのは…7秒だ。キャノンデールは15分ってところだろう。Sは1500Wくらいないと天井を見る事すら無理なんじゃないかな?Sワークスはアマチュアのことなど微塵も考えていない。
ISPは乗り心地には効く。効果はちゃんとある。こういった乗り心地の話をしていくと、ルック乗れば?トレック乗れば?となっていき、最終的にはアンカー乗れば?…にたどり着く。ジャイアントからしてみれば、中途半端に乗り心地を意識したわけではなく、ただ軽くしたかったのだろう。TCRアドバンスドSLのISPは軽さと両立できているから。
また、このシートピラーはセットバックが30㎜ほど前後でき、ボルト2本締めの無段階調節、しかも上下で挟むタイプでカーボンレールにも対応。素の製品としても非常に優秀です。
鏡の純度が他のフレームよりも圧倒的に高い。基準を乗り手側にさえ置いておけば他よりは返ってくる力が大きいから、TCRアドバンスドSLは、数あるフレームの中で、乗っていてもっとも楽しいバイク。挑戦する価値はある。
重ね重ね、巡航維持できる時間と引き換えだよ、と〝忠告″はしておくけれど。
~代理店より借りさせていただきました。総経距離ちょびっと~
- 商品名
- ジャイアント TCRアドバンスドSL と、Sワークス・ターマックSL3
- 登録日時
- 2012/02/15(水) 14:27
- メーカー名
- フレーム