グラファイトデザイン(以下GDR)の新作フレームでエントリーグレード~ミドルグレードに当たります。
ZANIAHと書いてザニアと読みます。
まず、僕は、総じて柔らかいフレームが好きであることを言っておきます。固いフレームは嫌いなタイプであることをあらかじめ断っておきます。
今まで発売されていたGDRの2つ、メテオスピードとメテオランチは、ともにソフトすぎるという声がありますが、僕はそうは思いません。実際に595に匹敵するバネと快適性を備えながら、どちらもかなり高い登坂能力も備え持っています。
だから、そのGDR史上最も剛性があり、かつバネ感はしっかり残したという開発陣の宣伝文句を見る限り、ハイエンドよりも15万円も安いザニアに購入検討の余地はありそうだったのですが、いざ乗り込んでみるとそう上手くは行きませんでした。
まずフロントが固すぎます。フォークの突き上げがヘッドチューブとトップチューブを介してサドルまで突き抜けてきます。ひたすら固い。「ホビーレーサー向けに開発されたフレーム」であるザニアが、普段から牙をむいてどうするのか。
一方でリアセクションはとてもやわらかい。GDRが誇っていたバネ感はただやわらかいだけのものに成り下がり、まったく巡航能力につながっていません。体に感じる固さが、自転車全体の速さにつながっていません。
確かに表面的には剛性があるように思います。体重のある僕にとって必要以上にやわらかいメテオスピードよりも、速度によってはリズムよく登るときがあります。しかし本当に芯まで固いのはメテオスピードの方。ザニアはここぞというときに腰が抜けてしまいます。スプリント時、アタック時、本当に必要な時に応えられない剛性は、最初から存在しないのと一緒です。
では価格は? 258,000円というのはメテオスピードに比べて15万円も安いと言えます。あのGDRが26万円弱で乗れるのは確かに魅力的かもしれませんが、良く思い出してみると25万円にはリドレーのヘリウムが存在します。リドレー・ヘリウムはこの価格帯としては抜きん出て速い。(しかもザニアより1万円近く安い。) そしてさらに悪いことに、たった4万円上には世界最高のフレームの1つである、ジャイアント・TCRアドバンスドSLが控えています。あるいはフェルト・F1やルック・586SLなど、ほんの数万円上に控えているハイエンド達とってみれば、このザニアの動力性能などハナクソのようなものであり、拷問クラスの乗り心地だけがSワークスに匹敵しています。
このインプレを書く上で困ったのは、比較すべき対象がいないことだ。はたして剛性が欲しかったのか、快適性が欲しかったのか、低コストで両立を目指した結果どちらも失ってしまったこのフレームは、いったい誰に薦めるべきなのか。
GDR・メテオスピードは、レースで勝てる脚を持った人が普段から乗り回すには最適でした。595亡き今、鋭さと快適さを両立しているメテオスピードに取って代われるフレームはとても少ないように思います。
しかし、ザニアにとって代わるフレームはいくらでもあるのではないか。巡行速度が速いわけでもなく、山やスプリントで速いわけでもない。快適さは世界最低レベル。そう考えていくと、どうしてもグラファイトデザインに乗らなければいけない立場にならない限り、ザニアにまたがる理由は見つかりません...。
~走行距離290㎞~
サイズ55、フルアルテグラ組、
ジップ202、レーシングライト他
タイヤはそれぞれヴィットリア・コルサCXとコルサSC、ヴェロフレックス・カーボン。
空気圧は全て7.8bar。
- 商品名
- グラファイトデザイン ザニア
- 登録日時
- 2012/11/12(月) 22:43
- メーカー名
- フレーム