フレームに車輪を付けて、パーツでコントロールをしているのが自転車ですが、そのパーツとパーツをつなげているのがワイヤーです。だからワイヤーをケチると、パーツそのものの性能が出し切れず、自転車のコントロールを妨げることになります。
良いワイヤーを入れた場合、具体的にどうなるかというと、よりレバーと変速器やブレーキまでの直結間が強くなります。各パーツの性能がワイヤーによって阻害されなくなるとも言えます。
変速機でもブレーキでも、基本的にはワイヤーでばねを引っ張っているだけなので、そこをつなげるワイヤーが良くなれば、バネレートを下げることができ、引きが軽くなるわけです。引きが軽くなるとどうなるか。よりコントロールしやすくなり、長時間のロングライドはしやすくなる。ダウンヒルでも指が疲れない。冬や雨であれば、かじかんで指が動きづらくなってきた時も操作が行いやすい。僕は握力が右64㎏、左56㎏ありますが、女性に対して作るときのような、とてもやわらかいブレーキタッチを好みますし、引き白もたっぷりとります。レバーの引きと握力とは関係ないと思っています。
ワイヤー自体は自転車全体の中では比較的低価格なパーツなため、タイヤとチェーンと並んで最初にグレードアップをするパーツ群であり、また最もコストダウンをしてはいけないパーツ群であり、完成車でもっともコストダウンの標的にされているパーツでもあります。 レーサーにおいて、タイヤ、ワイヤー、チェーンをケチるのは最も愚行だと思います。
ワイヤーに求められるのは、ワイヤー自身の性能の他に、性能の持続性、メンテ性、そして価格の3つです。ワイヤーそのものの性能は引張強度と摩擦抵抗の2つ。引張強度が低ければ、レバー…特にブレーキを引いたときにグニャっとした感覚が出てしまい、パーツ同士の直結感が薄れます。アウターケーシング内での摩擦抵抗は特に説明はありません。低い方がいいです。理想は油圧ブレーキ。ただし、優先順位は摩擦抵抗よりは引張強度の方が上。しっかりと引っ張れて、そのうえで軽いこと。逆はダメです。
まずはブレーキのインナーワイヤーの話をします。全体的な結論としては、今回紹介するBBBのワイヤーが最も良いということになるのですが、この話が一番長いので。
規格が特殊な高級ワイヤーで僕が試したことがあるのは4つ。アリゲーターのアイリンク、ノコン、パワーコーズ、そしてゴアライドオンです。この4つで、性能面だけでいえば、一番優れているのはおそらくパワーコーズ。次点アリゲーター。ノコン、ゴアライドオンです。ただしほぼすべて僅差です。
カンパの純正ワイヤーを0点、パワーコーズを100点として、アリゲーターは93点。ノコンも93点。ゴアワイヤーが90点くらい。シマノのデュラエースが30点くらいだと思っているので、誤差の範囲ですが、最も油圧に近い性能を持っているのはパワーコーズだと思います。ただし、メンテ性としてもっともダメなのもパワーコーズ。取扱や調整、管理まで全てがシビアで、組付のやり直しもあまりできない。専用パーツも多いのでトラブル時の対処も問題点。
アリゲーターやノコンはアウターケーシングがめんどくさいの一言。中のライナーは他同様の樹脂製なため、寿命が他と変わらないことを考えれば、上記4つではゴアライドオンがもっともメンテ性が良いです。総合してゴアライドオンです。
今回はその他に、ワイヤーの代表格であるジャグワイヤー。あとはアリゲーター。僕が使っているBBBと、デュラワイヤー、カンパワイヤーの5つと、KCNCのテフロンワイヤーとダイヤモンドコーティングの計7つを比較します。アウターケーシングはコンポの純正を使います。BBB、KCNCも一応同メーカーのものがあるのですが、シマノコンポの場合はシマノ純正、カンパの場合はカンパの純正アウターを使用しの比較です。
消去法で真っ先に落ちるのがジャグワイヤーとアリゲーター。引張強度が足りずにタッチがあいまいになる。この2つは使用感が気持ち悪くてすぐに交換しました。引張強度を比べてどちらが良いかといえば、どちらもダメでした。残りの5つの中で最もダメなのがカンパワイヤーなので、パワーコーズを100点、カンパを0点として、KCNCのテフロンワイヤーが20点、デュラエースが30点、BBBが80点、KCNCのダイヤモンドコーティングが86点と言ったところです。
KCNCの通常のテフロンワイヤーはグリスが必要です。BBBの880円に対して、さらに安い630円ですが、コーティングが非常にハゲやすいです。ダイヤモンドコーティングの方はかなりヌメッとしていて、ゴアライドオンに非常に近いタッチになります。こちらはグリスがいらないという点で、気軽に交換ができるゴアワイヤーとしてとらえることができますが、ブレーキの調整が非常にシビアです。また、ダイヤモンドコーティングワイヤーを一式でそろえると12920円かかるんですね。さらにアウターケーシングも別途必要になりますから、上記4つのワイヤーの価格に匹敵してしまうんです。僕は消耗品に対しては、価格というのをとても重要に思っていますから、予算があるなら入れた方が良いとけれど、BBBのことを考えると非常に迷います。本音を言うと、ブレーキのみで十分...といったところです。
アウターケーシングに関しては、基本的にシマノが一番良いと思います。メカニックとしても、アウターケーシングは固すぎてもやわらか過ぎてもダメなように感じます。どちらかと言えば固すぎる方がダメなのですが、とりあえず良いのはシマノだと思います。カンパとBBBはやわらかすぎ、ジャグとアリゲーターは固すぎ。KCNCのアウターはまだ発売されていないので使ったことがありません。ワイヤーをBBBに統一してアウターケーシングのみを比較すると、シマノが最もタッチが良くなることがわかります。ただしアウターケーシングよりもインナーケーブルの方がはるかに重要だとも言っておきます。
アリゲーター、ノコン、パワーコーズ、そしてゴアライドオンの4つはそれぞれ専用ですし、セット販売ですから、それを崩す理由はないと思いますね。
シフターに関して言えば、引張強度がたりないアリゲーターとジャグワイヤーを除いて、他はどれもそれほど変わらないように思います。アウター×インナー:シマノ×シマノが50点だとして、すべて60点から40点の間に収まると思います。アウターの性能でカンパが40点です。カンパのアウターケーシングは固すぎ。でも、シフターは、性能よりも取り回しの方がはるかに影響するので、ブレーキと比べるとかなり効果が感じ取りにくいです。
さて、なぜ僕がBBBを押すのかというと、性能の他に重要なことである、性能の持続性とメンテ性、そして価格の各分野をレーダーチャートにした時に、総合的にもっとも大きくなるのがBBBだと思っているからです。
性能の持続性は今回の比較した種の中では一番長く、経験談でシマノの4倍近く持ちます。通常は徐々に悪くなっていくのですが、BBBは悪くなるまでの時間がとても長く、寿命を迎えると一気に悪くなります。交換時期までずっと良い状態が続くとも言い換えられます。“甘味がずっと続くガム”に近いですね。これはコーティングの禿げにくさが影響していると思います。
メンテ性もよいです。テフロンコーティングがされているものでも、グリスが必要なものと不要なものと別れるのですが、BBBのワイヤーは必要ありません。グリスが当然無い方が良いです。グリスを付ければその分抵抗になり、時間がたてば埃を帯びて重たくなり、アウターの交換頻度も増えます。BBBの大きな特徴として、グリス不要という点が挙げられます。またグリスが不要ことから、アルミのアウターカップを使えるというのも、プチ利点として挙げておきます。プラスチックのアウターカップは安っぽく見えますし割れますので。
※その場合でもブラケット部だけはプラスチックを使った方が良いです。なぜかというと...(略)
そして最後の価格なのですが、BBBのワイヤーは1本880円です。高級ワイヤーがフルセットで15000円近くする中で、BBBは4本で3520円で、ワイヤーもコンポ純正が使えます。性能的に15000円クラスのワイヤーが100点~90点、5000円前後のレコードとデュラエースのワイヤーが30~0点の中で、3500円のBBBは80点なのですから、破格のコストパフォーマンスだと思います。しかもメンテ性もよく性能の持続性は一番良い。ロードレーサーのパーツの中でも1、2を争う消耗品が安いのは、とてもありがたく思っています。
オマケとして、BBBのワイヤーにはロード用とシフト用に2つのタイコがついています。タンデムでも使えるようにかなり長く作られているので、通常ロードレーサーに使うと反対側が余るため、クロスバイクやママチャリにも使えます。フリーダムでクロスバイクのワイヤー交換した人、もし黒いワイヤーが入っていたら僕からのサービスですので~♪
BBBは日本ではとても安っぽいイメージがあり、敬遠されがちなメーカーですが、実は良い商品をたくさん持っているメーカーです。完全に代理店がイメージ作りを失敗しているとおもいますね。
ちなみに僕が持つロードレーサー4台すべてに共通して入っている数少ないパーツの1つです。セラミックスピード社製のベアリングとプロロゴのバーテープ・スキンタッチ、ケオブレード、そしてこのBBBのインナーシフトワイヤーです。
僕のTTバイクはステムとフロントのブレーキキャリパーのワイヤー受けまでの感覚が3㎝位しかなくって、ノコン使うしかないかなと思っていたのですが、BBBのワイヤーとシマノの純正アウターだけで、メーカーさんや代理店さん、ライターさんらが驚くくらい軽く動いています。586のリアブレーキも、およそアウター全通しとは思えないくらい軽く仕上がっています。機会があれば握ってみてください。
- 商品名
- 各種ワイヤーについて。
- 登録日時
- 2012/02/14(火) 11:23
- メーカー名
- その他